最初こそ「ヤバイぞ!」とは思ったものの、
人間何事にも適応していくもので、
あれよあれよと前期の講義が終了した。
ワインのことを全く知らないため、
毎回3000~4000円するワインを2、3本買って帰ったが、
イマイチ美味しさは分からなかった。
職場の自販機にあるウェルチのほうが100倍美味い。
講義で印象に残ったのは、
酵母の会社から来た先生の『プロフェッショナルとは何か...』からの熱弁。
熱に当てられ、何事にも責任を持てる人間になろうと思った。
またある時には、生と死の境をさまよったこともあった。
いつもの入浴施設の露天に浸かっている時にそれは起こった。
『あそこあれ、山あるやろ~あれがあれや浅間山言うんや』
地元のおじいちゃんが話しかけてきた。
こう言うのをあまり無下にできない性格の自分はつい相槌を打ってしまう。
しかし、こういうおじいちゃんは話し出したら止まらない。
若いころに横浜へ出稼ぎに出た話―――
北島三郎の家を見に行った話―――
奥さんとの出会いから孫が産まれるまで...、ずっと聞いた。
ここでひとつ補足しておくと...
おじいちゃんは湯船のふちに腰かけ、足湯状態なので全然楽勝なのだが、
こちらは胸まで浸かっている上、話の腰を折ってしまわぬよう身動きできないままでいた。
そしてまた、横浜へ出稼ぎに出た話になる。
これはヤバイ、2周目に入った。
その次は、やっぱりきた!北島三郎だ!
2回目の孫も産まれたぞ!!
もうクラクラしてきた。時計は無いが体感30分は浸かっている。
そして死の淵に立たされた3周目の頭で「ありがとうございました!」
意味の分からないお礼を言い、露天を出た。
汗が噴き出して止まらない...
頭がぐわんぐわんする...
足が上がらない...
視界が白いモヤに覆われて...
これ、死ぬんちゃう!
――――――
別の日、そのおじいちゃんが若者を捕まえているのを目撃した。
今宵も犠牲者がまたひとり。